ノベルス版 2008年1月25日初版発行「34-67」
支持率低下に悩む日本の内閣と、中央政府からの支援を満足に受ける事が出来ないサハリン千島極東地域が手を結び、起死回生の策として発動したKE作戦。ソビエト崩壊後、弱体化の進んだロシア海軍の隙を突き、北方領土を日本に取り戻すのがこの作戦だった。陸自部隊上陸による北方領土占領が進む中、他地域への影響を恐れたロシアは、日本に対し軍事的に反撃に出た。
近年はSOFの活躍が多かった中で、久々に陸海空の大規模な自衛隊の活動が書かれた作品です。
海自では2007年夏に進水したDDH“ひゅうが”も登場しますが、残念ながら艤装もまだ完全ではない状態ではありません。願わくば艦隊旗艦としての運用が見たかったのですが、時期的にはまだまだなのでしょう。陸自は03式中SAMが登場し、稚内のレーダーサイトを襲った対レーダーミサイルを迎撃しています。合衆国シリーズ以前のハイテク兵器の見せ場を上手く書く大石作品の再来で、なかなか見応えがありました。
サハリン争奪戦の続編と言う事で、サハリンのサークルシティの住民たちや、まだサイレント・コアは出てこないものの、隊員の一人である姉小路一士が出てきます。まだ序章という感じで、まだ本格的には行動を起こしてはいませんが、巻が進む毎に日ロの動きとは別に日常を守る為に動いていくものと思われます。
ノベルス版 2008年2月25日初版発行「34-68」
弱体化したロシア極東軍の隙を衝き北方領土を無血占領した自衛隊。ロシア軍は空海軍機で編成した戦爆連合軍を投入するが、航空自衛隊によって一方的に撃退される。しかしこの戦闘で被弾脱出した空自パイロットがサハリンに降下し、逃避行を余儀なくされる。一方前回作戦の教訓を生かしたロシア軍は日本の士気を削ぐため、再度北方領土海域に展開する海自艦隊に対し対艦ミサイルによる飽和攻撃を敢行するのだった。
自衛隊による電撃的な北方領土占領、対するロシア軍の同地域の武力奪還と自衛隊による防衛が書かれています。ロシアは戦後長らく直接的な戦争を経験しなかったがために同胞の死に非常に敏感な日本の世論に付け入るべく、冷戦時代からの伝統である爆撃機によるミサイル飽和攻撃によって海自艦艇を一隻でも撃沈してそれを撮影公表して、日本の世論に冷や水を浴びせて早期解決を図ろうとします。日本はその点を織り込み済みで気さくを用いて対抗します。
また敵地であるサハリンで撃墜され脱出した空自パイロットは最初は若手パイロットによるサバイバル技術で危機を切り抜け、後半スペツナズまで投入して捕虜獲得に乗り出したロシア軍に対しては、おなじみサイレント・コア投入によって難を乗り切ります。第一巻では部隊は登場しなかったものの、隊員の一人である姉小路一士が登場していたので、いずれは登場するとは思っていましたが。
前巻の感想でも書きましたが、航空機や艦船などの大型のハイテク兵器が活躍し、子供が話の中心に登場せず、不意に敵地へ放り出されても自らの知恵で難局を乗り切る描写など、作風が以前のような感じに良い意味で戻った気がします。
ノベルス版 2008年4月25日初版発行「34-69」
占領された北方領土への攻撃が失敗したロシア極東軍。防御の厚い北方領土を避け日本本土への直接攻撃を画策する。航空自衛隊の隙を衝き北海道千歳基地を爆撃するロシア軍。そしてついに犠牲者が…。そして国後択捉にはロシア軍コマンドが潜入を試みていた。
日本に対して軍事的に失点続きのロシア軍が矛先を変えて一矢報いる巻です。二巻末では迎撃手段の極めて少ない弾道弾による攻撃が想定されていましたが、より確実で政治的に効果の大きい爆撃機による反撃を行ないます。基地への被害は最小限に抑えたものの、市街地上空で空自戦闘機が爆撃機を撃墜し民間人に少なくない犠牲者を出してしまいます。これがこれからの悲劇の序曲となるのか、アルファ部隊や航空燃料を満載した駆逐艦などロシア軍の新たな攻勢が次巻以降で描かれるものと思われます。
ノベルス版 2008年6月25日初版発行「34-70」
択捉島に潜入したロシアコマンド“アルファ部隊”は携帯型戦術核を使用し、空自防空指揮所を潰滅に追い込んだ。想定外の核攻撃に戸惑う自衛隊。アルファ部隊はその後も後方かく乱を行い、陸自部隊、特にサイレント・コアを翻弄する。千歳爆撃と択捉核攻撃に気を良くしたロシアは北方領土の軍事的奪還を果たすべく大反抗作戦の計画を進めていた。
前巻に少しだけ出てきたアルファ部隊ですが、せいぜい嫌がらせ程度の後方かく乱程度を想像していましたが、まさか小型とはいえ核兵器を使用するとは思いませんでした。前巻を見た印象とは正反対といえます。実在するかは不明ですが、米軍が開発していた核砲弾のデイビークロケットよりも小型で携帯火器のRPGをプラットフォームとする核兵器は射手をも巻き込みかねないだけに、研究はされていた可能性はあっても実戦配備は無いでしょう。サイレント・コア側もアルファ部隊掃討時に核弾頭を鹵獲していますが、この弾頭を今後の重大局面での使用も示唆していて、サイレント・コアが報復核攻撃を行なうのか、不利な戦況になりつつある状態で興味のあるところです。
ノベルス版 2008年8月25日初版発行「34-71」
択捉島の爆心地に陣地を構えた陸上自衛隊。サイレント・コアや重迫撃砲中隊、地対艦ミサイル連隊の支援の下、何とか空挺部隊や海軍歩兵を撃退する。しかし膨大な損害を払いながらも次々と兵力を投入し、第二の核攻撃を実施するロシア軍。そして後方ではひた隠しにされてきた自衛隊への核攻撃が暴露されてしまった。
冷めようとする世論、戦いの行方は?
択捉島の戦いが中心となっている巻です。爆心地に陣地を構える事によって撤退の意思がない事を明確にしようとする日本と、爆心地が手薄になっていると思い、択捉への足がかりにしようと目論んでいたロシア軍が激突します。自衛隊側は用廃となった六〇式106ミリ自走無反動砲を万が一には簡単に破棄する事ができ、対歩兵用としては十分な威力のある火器として投入してきました。今まで大石作品には登場したことが無く、今後も活躍する事は無いだろうと思っていただけに、この活躍は驚きました。
またあまり小説には登場しない八八式地対艦誘導弾を装備する地対艦ミサイル連隊も登場しています。
この連隊は第二次太平洋戦争以来の登場で、本来の想定である“領土に押し寄せてくるロシア(ソ連)上陸部隊の撃滅”と言う任務としての活躍は初めてです。
その他には“ひゅうが”と同じく登場はしたものの実力を発揮できずにいる新戦車TK-X(劇中では正式採用後で一〇式戦車)とAIP潜水艦“そうりゅう”の活躍は次巻に持ち越しのようです。
ノベルス版 2008年12月20日初版発行「34-72」
ロシア軍の空挺部隊や海軍歩兵、スペツナズの猛攻を退けた択捉の自衛隊。しかしロシアは択捉島に隣接する得撫島に部隊を置き攻略の足がかりにしようと画策する。自衛隊はサイレント・コア司馬小隊を威力偵察に投入するが…。
そして択捉深くに潜入した特殊部隊アルファは残り2発となった小型戦術核“ヴォストーク”効果的に使うため要衝の天寧空港に進み形勢逆転を狙っていた。
北方領土の最前線の陣地である蘂取は依然として陸自が主導権をとっており、正規部隊同士の戦いでは八八式地対艦誘導弾を地上攻撃モードとして使うなどハイテク兵器の活躍が描かれています。しかし特殊部隊による撹乱ですぐに危機的状況に陥る不安が残っています。次回予告にある煽り文句の“西の空に再び「あの光」”ははたして…。
ノベルス版 2009年1月25日初版発行「34-73」
天寧空港で小型戦術核を炸裂させたものの、辛うじて被害を最小限に抑える事が出来た自衛隊。一方得撫島ではロシア軍の飛行場設置を防ぐべくサイレント・コアと迫撃砲部隊が展開、更には一〇式戦車を中心とした機甲部隊が上陸した。
一方的な展開にロシア軍は遂に最終手段に打って出た。
本作品の最終巻です。登場はしたものの大した出番がなかった新型潜水艦“そうりゅう”や一〇式戦車が、我が戦場を得たりと活躍をします。まあ一方的な戦いの気もしますが。
ほぼ戦場の描写で終始しましたが、政治家や官僚の描写も欲しかったところ。またサハリンが戦争終結の鍵になるのでは思われましたが、こちらもだんだんフェードアウトしていって最後はほとんど本筋に関わらなくなり逆に実際にはありえそうとはいうものの、アメリカの介入によって停戦と詰め込みすぎて取捨選択に失敗した感があります。
ノベルス版 2009年5月25日初版発行「34-74」
首相を乗せ沖縄に向かっていた首相専用機が不可解な機動をした後、レーダーから消えた。空自海自の捜索機が出動するも、現場空域を管轄する米軍により締め出されてしまう。サイレント・コアは密に“リザード”田口と“ヤンバル”比嘉の二名で首相を救出するミッションを発動するものの、二人だけという編成と何故かベトナム戦争を彷彿させる古い装備を使うという不可解なものだった。
クレイ射撃でオリンピックにも出場し、生まれは良いが育ちは悪い某首相が登場します。物語の舞台は時間軸が交錯して怪現象が多発している無人島、作品としては後期のブルドッグシリーズのような舞台設定です。島に潜入した田口と比嘉はそこで防大出たての音無2尉や後に米陸軍の中枢を担う若き士官たち。現代と過去が関わりながら話は進んでいきます。特に若き日の音無2尉は現代とのギャップが今回の見所といえます。
ノベルス版 2009年8月25日初版発行「34-75」
韓国が領有権を主張する独島(竹島)が、何者かによる攻撃を受け守備隊が全滅した。日本海における海保と韓国海上警察の関係悪化のおり、日本による攻撃と判断した韓国は報復攻撃を決断、その目標にかねてより領有権を主張していた対馬を選択した。政治的判断により対馬へ事前に兵力を展開できない日本と、奇襲効果を期待するあまり十分に準備を行なえなかった韓国。そのような状況下で韓国軍による空挺降下で戦端は開かれた…。
国境の島として揺れる対馬が舞台です。最近は韓国資本が自衛隊施設の隣の土地を購入したり、陸自対馬警備隊の動向を探ろうとするなど、なにやら不審な動きが目立つといわれています。ネットで立ち読みできたプロローグでは、ソマリア沖に展開した自衛隊部隊にファビョる韓国海軍の艦長が登場しますが、本編では従来の作品同様に韓国側の政治家や軍人もそれなりに冷静に行動しています。今の大統領が現実でもそれなりに現実的な政策を行なっているのでそれに準拠したものなのでしょうが、もし前大統領だったとしたら物語はまた違った様相を見せていたかもしれません。
ノベルス版 2009年9月25日初版発行「34-76」
韓国軍は空挺降下に続き海兵隊を上陸させ、対馬占領を確固たるものにしようとする。しかし日本側は対馬警備隊やサイレント・コアによってゲリラ戦を展開し韓国軍の兵力を兵力を削ぎ、西普連の増援部隊と呼応して下対馬を奪回した。
海自部隊も九州〜対馬のラインに艦隊を集結し、反撃に移りつつあった。
劣勢に立った韓国軍は状況を打開すべく、大規模な空挺部隊を再び下対馬に降下させる作戦に打って出た。
上陸した韓国海兵隊を徐々に撃破していく陸自ですが、120RTや01式軽MAT、96式多目的誘導弾のほか、現時点では装備していないハンター弾やNLOSなどを使用しているのもサイレント・コアらしいといえばらしいです。海自は博多湾などで集結を終え恐らく次巻で本格的に投入されると思いますが、全体的に序戦と本土からの部隊が対馬に投入される橋渡し的な巻といえます。
ノベルス版 2009年12月20日初版発行「34-77」
海自護衛艦隊による迎撃により韓国軍空挺部隊の対馬降下を最小限に抑えたものの、韓国軍を排除するには至らなかった。上対馬に展開する陸海空自衛隊は孤立し数倍に達する韓国軍に押され始めていた。サイレント・コアの土門は奇策を用いて状況を打破しようとするが…。そして海では対馬近海に展開した韓国新鋭潜水艦が海自に襲い掛かる。
陸上での戦闘のこう着状態を打破するため、陸海のヘリ部隊が活躍する巻です。近作でもあまり活躍の機会が無かった海自の新鋭ヘリSH−60Kが中盤の主役となりますが、それは不審船対策用として搭載されていたヘルファイヤ誘導ミサイルにより、想定外の任務に抜擢されるという過酷なものです。終盤の護衛艦“いかづち”撃沈やSHの損失など、北方領土奪還作戦では一人の戦死者を出さなかった海自は、今回かなり苦しい立場に立たされています。
ノベルス版 2010年3月25日初版発行「34-78」
護衛艦“いかづち”撃沈に続き、戦闘ヘリロングボウ・アパッチも撃墜され苦戦する自衛隊。航空部隊展開の障害となる韓国海軍イージス艦を排除すべく海自は秘密兵器を投入する。一方韓国軍は報道とは違う前線部隊の実情をネットで赤裸々に綴る兵士が現れその対応に苦慮していた。更には防備の薄くなった38度線に対し、北朝鮮が動き始めようとしていた。
一時的な勝利を目にして本国の士気が上がり、前線の状況と後方の意識の差が広がる韓国。本国の熱を冷ますかのようにツイッターの淡々としたそれでいて衝撃的な書き込み内容がアップされ議論が巻き起こりますが、
既刊で韓国軍に接収された駐屯地に突入して自爆した偽装少年も結局ネット上で一時的に取り上げられただけのようで、今ひとつネットやマスコミの戦争の影響という点では踏み込めていないような印象を受けます。まだ完結していないので、今後じわじわと効力を発揮するのかもしれませんが。
ノベルス版 2010年4月25日初版発行「34-79」
突如発生した竜巻により混乱する戦場。戦争を終結させるべく両軍は対馬に最新鋭戦車を中核とする機甲部隊を上陸させ、決戦を挑もうとしていた。しかしこの戦争により極東のパワーバランスが崩れ始め、戦乱は朝鮮半島に飛び火する事態となった。
一応完結編です。対馬での戦争は第7機甲師団の投入により終結したものの、韓国国内での北朝鮮のものと思われるテロ攻撃が起こり、韓国では完全に戦火がやんだとはいえない状況となっています。原因となった竹島への攻撃を行なった勢力の正体が明らかになってはおらず、朝鮮半島を戦場とした続編が刊行されると思われます。次回作はもう少し後方の政治が掘り下げられたらと思いますが、現行政権との乖離が酷くなる可能性もあり難しいかもしれませんね。
ノベルス版 2010年8月25日初版発行「34-80」
韓国軍の対馬侵攻は38度線の北に対する防御を手薄にする結果となり、この事態を好機と捉えた北朝鮮はあらかじめ潜入させていたコマンド兵に武装蜂起させ、ソウルなど主要都市を地獄へと変貌させた。韓国軍は対馬に展開していた部隊を釜山に戻すべく、先ほどまで戦争をしていた日本に協力を要請した。先鋒部隊の一員として釜山に上陸し、海軍司令部など主要施設を奪還する陸上自衛隊特殊部隊“サイレント・コア”と韓国陸軍。しかし北朝鮮は38度線を越えて主力部隊を南下させようとしていた。
対馬奪還戦争から続く直接的な続編です。対馬は多くの犠牲を払いながらも無事日本の主権を維持する事が出来ましたが、更に厄介な朝鮮戦争の介入と言う事態に直面します。韓国人に侵略軍と誤解されるのを恐れる自衛隊。さっきまで日本に侵攻していたのを都合よく忘れて応援を要請する韓国軍。危機的状況ながらも今一つ歩調をあわせられない部分が描かれています。
ノベルス版 2010年10月25日初版発行「34-81」
自衛隊を半島有事に介入させた日本に対し、北朝鮮は弾道弾による飽和攻撃を実施した。日米両軍の迎撃により多数の弾道弾を撃墜するが、ダーティーボムを搭載した弾頭が札幌に落下し、甚大な被害をもたらした。
一方釜山ではサイレント・コアと第7機甲師団の一部、在日韓国人義勇部隊が、街中に潜伏した北朝鮮特殊部隊との戦闘に突入していた。
対馬の戦争以来初めて日本本土が弾道弾による被害が発生しますが、百発前後の飽和攻撃に対して着弾が十数発というのは、現実の数字からすると良い方なのでしょうか。しかし撃ち漏らした弾道弾の中にダーティボムが搭載されていて、今までの作品の中で受けた日本領土での被害としては最悪のものとなっています。
この一連の流れの中で登場する政治家が防衛大臣くらいなのが、少々気になる点です。大規模の天災よりも重大な事案である戦争がおきているのに総理や内閣の各大臣がほとんど出ないのが、大局的な部分で今一つ緊迫感のない展開になってしまっている感があります。現場の描写としては、札幌の爆心地付近での母子を救う事が出来なかった化防隊の心理など良いものもあるのですが。
ノベルス版 2011年1月25日初版発行「34-82」
韓国軍はソウルに足がかりを築くために、サイレント・コア司馬小隊と共に空挺降下作戦を実施するが、北朝鮮軍の戦車部隊と砲兵部隊に動きを阻まれる。一方本格的に朝鮮半島に部隊を上陸させた陸自第7機甲師団は陸路ソウルを目指し進軍を開始した。民間人を盾に進撃を阻む北朝鮮軍に苦戦する日韓両軍。更にはコマンド部隊が後方をかく乱、前方には機甲部隊と砲兵部隊。ソウルへ向かい部隊の道は険しかった。
釜山の戦闘が一段落つき自衛隊の投入が本格化してきますが、政治パートが今回皆無なので半島有事への武力介入に消極的だった自衛隊が本腰を入れた描写が唐突な感があります。日本に対する艦上が微妙な地域なので、政治描写は必須だとは思うのですが、民主党が与党から転げ落ちるのも時間も問題な現在、軍事描写に集中して政治面はカットしたのかもしれません。
ノベルス版 2011年3月25日初版発行「34-83」
司馬小隊に続き、日韓空挺部隊本隊が北朝鮮軍の居座るソウルに空挺降下を行い、首都奪回への足がかりを築いた。北上を続ける機甲部隊も順調な行軍かと思われたが、幽霊部隊によるトンネルでも待ち伏せ攻撃により手痛い損害を被ってしまう。犠牲を出しながらも日韓機甲部隊は戦車の圧倒的な能力差により本命の敵戦車部隊を潰滅に追い込み、韓国南部を着実に奪還していった。しかし北朝鮮が小型核を持ち込んだ痕跡が認められ緊張が走る。
前巻に続き戦場主体でストーリーが進んでいきます。日本政府の描写がまったく無い中で、前シリーズからの事態の発端である竹島攻撃の真相があっさりと出てきたのが唐突かなと。この話はやはり政治家同士の会話の中で語られた方が自然な流れだとは思うのですが。
ノベルス版 2011年6月25日初版発行「34-84」
韓国全土で繰り広げられる戦いは、台風の接近により積極的な攻勢が取れない状況となりつつあった。日韓合同軍は、暗視装置や主力戦車などハイテク装備を駆使してソウルに向けて少しずつ前進を続けていくが、後方に浸透した北朝鮮のスパイが脅威として残り、その矛先は海自の新鋭輸送艦にも向けられた。
核の脅威も取り除き、やや歩みは遅いながらも、当初よりは結束力を高めつつソウルに向けての進軍を続けていますが、戦車戦においても第7機甲師団の描写が中心で、韓国軍の活躍はあまり見られません。また北朝鮮のコマンドの動きが次巻の布石として書かれ、陸上での反転攻勢とは裏腹に海上では警備の手薄な新鋭輸送艦に対して北朝鮮の手痛い反撃を受けそうな流れです。
ノベルス版 2011年9月25日初版発行「34-85」
韓国への武器弾薬を満載した海上自衛隊輸送艦「房総」が北朝鮮のコマンドによってシージャックされ、海自・陸自の部隊が奪還に向かうが、輸送艦に積載されていた火器などにより反撃を受け多数の戦死者を出してしまう。辛うじてSBU隊員数名が「房総」に取り付いたものの、組織的な行動が出来ない状態に陥ってしまう。北朝鮮テロリストも一艦を制圧するには少なすぎる兵力のため、完全に掌握しきっていない艦内に盲点を作り出していた。
仁川上陸作戦とありますが地上部隊の描写は少なく大半は高速輸送艦「房総」にストーリーの大半が割かれています。上陸作戦自体も本巻ではなく次巻で行われる可能性が描かれています。最後に思わぬ作戦が発動されますが、終わりが近づいたと思えたこの戦いも先の戦争に似た展開を迎えるのかもしれません。
ノベルス版 2011年9月25日初版発行「34-86」
38度線を越え北朝鮮領内に上陸する日韓合同部隊。一方の北朝鮮軍は戦況の悪化を食い止めるべく虎の子の機甲部隊をソウルに向けて南下させた。そして海では北朝鮮コマンドが再び高速輸送艦「房総」を攻撃する機会を狙っていた。
昨今の政治事情や原子力災害などにより、政治描写や核テロのその後が書かれなかったのが残念といったところですが、久しく影の薄かった音無隊長がアーウェン37片手に土門や司馬の前へと文字通り降り立ち、戦場に復帰したので、個人的には満足した巻でした。