第三次世界大戦1太平洋発火

ノベルス版 2016年3月25日初版発行「34-110」

 アメリカ、ロサンゼルスにて中国人同士の銃撃戦が発生、大統領にも影響力があるIT長者の妻子が巻き込まれた。やがてそれはサイバー戦での報復に、更にはステルス爆撃機による現実世界での中国本土への報復攻撃へと発展した。日本もきな臭くなる日中の間に挟まれ防衛力の強化を余儀なくされる。
太平洋沿岸の各地で戦闘を行ってはきましたが、世界規模の物語は初となります。第三次世界大戦というタイトルはベタだと先生は話してはいましたが、結局そのままになった模様です。
 カバーイラストではDDH“かが”にそのままF-35Bを搭載しているのが気になりましたが、本編を読めばその経緯が記されています。中東でも政情不安が発生してますが、これは太平洋地域だけでなく、世界大戦に至るものとして登場したものと思われますが、こちらの原因についてはまだ語られていませんが、いずれリンクされるものと思われます。また土門がついに音無隊長を越えて一佐となり有頂天になっていますが、恐らく部下たちは「一佐殿w」ってな感覚で呼んでるのでしょう。

第三次世界大戦2連合艦隊出撃す

ノベルス版 2016年6月25日初版発行「34-111」

 緊迫するアジア情勢に対応するために英海軍より編入したヘリ搭載護衛艦“ほうしょう”の回航を急ぐ海自だが、中国軍の様々な妨害を受けつつも、陸自パイロットにより運用される艦載機やサイレント・コア姜小隊により辛うじて被害を逃れていた。そして中国は米国に対しても一矢報いる作戦を極秘裏に進めていた。
 二巻では海自のヘリ空母“ほうしょう”の日本への回航に主眼が置かれています。陸自ヘリパイロットが慣れないV/STOL機を使いこなしつつ、中国との戦いで腕を上げていきます。少々都合良く難を逃れているような感じはなくもないですが、ここで痛手を負うとまだ序盤の段階なので好ましくもないとも思えます。
また一巻もそうですが帯に使われているセリフがパトレイバーからのものですが、今後もこの路線が続くのか気になるところです(笑

第三次世界大戦3パールハーバー奇襲

ノベルス版 2016年8月20日初版発行「34-112」

 中国は第二次世界大戦で日本軍が行った真珠湾奇襲を研究し、米国など世界各国に悟られることなくハワイを奇襲制圧をした。日本の真珠湾奇襲と違い、歩兵部隊を伴いオアフ島などハワイの主要地域を占領したため、容易に反攻作戦を行うことができなかった。米政府が後手に回る中、ハワイ在住の元軍人からなる義勇兵が秘密裏に編成され中国軍に出血を強いる。その中には元サイレント・コアのあの男の姿が…。
一方南西太平洋海域では海自と中国軍の激突が断続的に起こり、自衛隊側に有利な状況が展開するも戦死者が出てしまう。

 自衛隊を退官した音無ですが、それで大人しくなるはずもなく、突然戦闘の渦中に放り込まれたハワイで義勇軍を纏め上げて中国軍を翻弄します。米中激突で触れられていた音無の民間軍事会社設立の道筋が垣間見えますが、2020年問題の一つでもあり想像以上に規模の大きな組織になる模様です。

第三次世界大戦4ゴー・フォー・ブローク!

ノベルス版 2016年11月25日初版発行「34-113」

 中国軍に占領されたハワイで撮影された「
アラ・ワイ運河の恋人」はハワイでの反中国の象徴として瞬く間に全世界へと配信された。占領政策への影響を懸念した中国軍は動画の二人を確保しようとし、またアメリカは二人を保護しようと戦線の離脱を要請するが・・・。
一方西太平洋では双方の日中空母戦力が激突するものの、日本のワンサイドゲームとなっていた。しかし中国海軍の新鋭潜水艦が海域に現れて海自機動部隊を翻弄する。そしてこの混乱の中、眠れる大国ロシアが中国サイドについて目覚めようとしていた。

 今回はあまり政治が動かず戦場での描写がメインの巻となっています。プロローグとエピローグ、そして中ロの動きなどはありますが。サイレント・コアでは土門が音無と再会(?)を果たし、姜小隊は引き続き海自連合艦隊に残留、司馬二佐は登場しません。大きく世界大戦の様相となるのは、ロシアが本格的に介入し、1巻で少し書かれた中東での混乱が戦争へと拡大するようになってからでしょう。
また本編とは関係ありませんが、今回同時発売された作品や来月発売の作品について書かれた投げ込みが挟まれていなかったのが少々気になります。ジャンルとしては衰退の一途であるノベルスに於いて、定期的に刊行しているC★NOVELSも先月は刊行作品がなかったり、大賞が無くなったりと寂しさを感じます。


第三次世界大戦5大陸反攻

ノベルス版 2017年3月25日初版発行「34-114」

 米陸軍の戦力増強の失敗と中国軍のレジスタンス対策により膠着状態に陥ったハワイ。米軍は状況打破のために「潰し屋」の異名を持つ将軍をハワイ奪還の総司令に送り込んだ。一方西太平洋ではハワイ占領の報復として日米軍による海南島攻略を行い橋頭保を確保するが、中国側もロシア軍のステルス機を投入し、米軍のステルス機を多数撃墜されてしまう。

ロシア軍が中国側に立って参戦し第三次世界大戦と作中でも明記されますが、一巻で描写されたサウジアラビアでの政変やまだ明確にされていない欧州情勢などが描かれずに、五巻にまで達しました。ハワイの状況は大きく動きませんでしたが、壊し屋中将や音無元隊長により今後のハワイ奪回戦の下地作りに費やされています。

第三次世界大戦
香港革命

ノベルス版 2017年8月25日初版発行「34-115」
 ハワイ侵攻の対抗措置として米海兵隊が海南島に強襲上陸した。そしてこの作戦で中国をさらに揺さぶるために、実在しない陸自上陸部隊を捏造した。一方香港では民主化を目指す勢力と中央政府、そして共産党を揺さぶる外国勢力が虚々実々の駆け引きを行っていた。また日米軍はロシアの新たな脅威に直面する。

 南シナ海や中国近海で活動する日米部隊に対しロシアと中国は極めてローコストで製作できる無人機を繰り出して圧迫しますが、こうした兵器が戦場に登場すると、現在のハイテク高額兵器では太刀打ちできなくなり、戦場の様相は一変してしまうかもしれません。また世界大戦としているものの、中東の混沌は現状では1巻で少々描写されるのみで、まだ詳細は語られていませんが、サウジ王族を日本が確保しているので、後々自衛隊が中東に投入されるのかもしれません。


第三次世界大戦沖縄沖航空戦

ノベルス版 2017年12月25日初版発行「34-116」

 安価に大量生産できる無人攻撃機が海南島に上陸した米軍を襲い壊滅的なダメージを与えた。そして中国は次に沖縄の米軍基地にターゲットを定めた。極東での兵站の拠点である沖縄を失えばこの大戦の敗北は免れない。電子妨害も電磁パルス攻撃も効果が無く、物理的攻撃も対費用効果が見合わず打つ手は無いかのように思われた。

 ハワイと東シナ海、西沙諸島、そしてサイバー領域と広範囲で戦闘が行われています。いずれも両社とも決定的な主導権を得られず一進一退の状況となっています。無人攻撃機やF-35が抱える弱点など優勢を保ってきた日米軍側にも危機が迫ります。
 表紙のP-1改“AL-1 ヤマタノオロチ”ですが、P-2Jと同等の塗装となっているのが目を引きます。また攻撃ヘリにもレーザーポッドがパイロンに装着されていますが、今回の巻では登場しません。

第三次世界大戦フィンテックの戦場

ノベルス版 2017年12月25日初版発行「34-117」

 香港でのフェイクニュースを阻止するために中国当局がとったネットの遮断は中国のみならず世界を混乱に陥れた。特にネット決済が主流となった経済は戦争被害にも匹敵し、中国国内では暴動が多発する。一方ハワイでは体勢を立て直した日米軍による中国軍への大攻勢が始まろうとしていた。

 最近は大体8巻でシリーズ終了してたものの、シリーズ完結とあったので中東情勢も描かれず世界大戦というより東南亜戦争というようなイメージで、中途半端な終わり方だなと警戒して読み始めましたが、ひとまずの終了ということで次作が期待されます。多分第三次世界大戦の続編の間に“超時空戦艦大和”の続編が入るらしいというのは、文庫版「南沙艦隊殲滅」のあとがきに触れられています。ただ初期にはページを割いて書かれていたケンジントン政権の描写が公判ではほとんど無かったのは少々残念なところ。ラストで次シリーズへの大きな情勢変化がありますが、これが戦争の趨勢にどう反映されるかが気になるところです。

消滅世界(上)

ノベルス版 2018年4月19日初版発行「34-118」


 長野県伊那地方の過疎集落に突如現れた謎の物体。付近で発見された謎の少女から得られた情報から、以前現れ消えた戦艦大和を擁する異世界との接点だと判明した。そしてこの出現した物体は徐々に大きくなり、やがてはこちらの世界も向こうの世界も飲み込んでしまう危険なものであった。サイレント・コアの援軍を求む異世界の日本海軍少将伊地知。果たしてサイレント・コアは世界を救えるのか?

 長編合間のトンデモ中編です。前作の大和はなかなか面白かったので、続編の登場は楽しみでした。中でも向こうの世界の性格が正反対の通称白司馬さんやどこかの初代隊長のような三島大佐などニヤニヤしながら読むことができました。上巻で一区切りついたかのように見えますが、実はまだまだ時空の選りが更に複雑になってしまい、土門隊長も異世界の迷宮に迷い込んだようで、より強力で土門が頭を抱えるような誰かさんや誰かさんが下巻で登場するかもしれません(笑)

消滅世界(下)

ノベルス版 2018年6月20日初版発行「34-119」

 並行世界で世界消滅の危機を救った陸自特殊部隊“サイレント・コア”。しかし戻ってみると日本ではあったが元からいた世界とはズレがあった。自衛隊は国軍化され、サイレント・コアは存在せずに隊員は散り散りに、そして土門は身に覚えのないセクハラ疑惑に窮地に陥っていた。この世界にはある人物の強い想いが時空を歪めていたのだった。元の世界に戻るために土門たちは行動を開始する。

 上巻で一応のカタが付いていたので、下巻はどうなるのかと思っていたら、サイレント・コアの面々にとっては並行世界の敵よりもさらに厄介な状況になっていました。サイレント・コア隊員のいつもとは違う顔を楽しむ間でもありますが、この世界の司馬さんは更に輪をかけて凶暴に、音無は全く逆の善人になっています。様々なキャラを楽しむ閑話休題の短編と言えます。
 そしてまったくの憶測ですが、こうした並行世界の話はサイレント・コア世界における所謂2020年問題の対策的な意味合いを持ってるのかもしれません。

覇権交代1 韓国参戦

ノベルス版 2018年10月20日初版発行「34-120」


 日米優位で推移しているかに見えた第三次世界大戦。しかし中国は日米に対し意外なカードを切ってきた。韓国に米韓軍事同盟を破棄させ、中国側に引き込んだのだ。動揺する米側の各国。そして韓国に配備された弾道ミサイルが日本にむけて発射された。

 第三次世界大戦の続編です。エピローグで韓国が中国側にたって参戦する旨は書かれていましたが、その経緯が説明されているものの、経済的にアメリカよりも中国の方が間もなく上になるので乗り換えた方が良いとのことで、自由な経済活動や言論など、今度中国による世界支配について予想される闇の部分が想定されておらず、日米側自由諸国の不安や懸念がこれらの中国の闇の暴露によって覆されるのかが物語の主軸になるのでしょうか。その場合、本巻では登場しなかった司馬2佐が活躍するのだろうとは思います。

覇権交代2 孤立する日米

ノベルス版 2018年12月20日初版発行「34-121」

 韓国より九州の自衛隊駐屯地がミサイル攻撃を受け、民間人を含む大勢の死傷者が発生し日韓の亀裂は修復不能の状態に陥った。また米海兵隊と共に海南島に上陸した陸自水陸機動団は橋頭保を確保したものの、多数の戦死者が発生した。同じく海南島に上陸したサイレントコアも中国軍の罠にはまり窮地に立たされる。更には韓国陸軍の機甲部隊も日米軍を圧迫し始めた。

 韓国が本格的に中国側についていますが、今まで可能性としてはあるかもしれないという状況でしたが、2018年の旭日旗の問題や慰安婦、徴用工の問題、そして平時の軍隊運用ではありえない戦闘行動とも受け取れる火器管制レーダーの照射、更には国家レベルでの逆ギレと、どんどん最悪の道を進んでいるように思えてなりません。それほど遠くない未来に「覇権交代」のように、西側陣営からレッドチームへの鞍替えが観ることができるのかもしれません。

覇権交代3 ハイブリッド戦争

ノベルス版 2019年3月20日初版発行「34-122」

 海南島で発生した日中韓の戦闘は辛くも日本が戦死者を出しながらも、救助した海兵隊員と同行した官僚を連れて撤収することに成功した。しかしその戦闘を情報戦に持ち込む韓国。そして韓国に続き日米側から離反する国が現れ、国内では反戦運動がや厭戦ムードが徐々に浮かび上がる。

 海南島の戦闘だけでなく、日本国内外の民間レベルの話も進行していきますが、相変わら主要陣営であるはずのホワイトハウスの大統領以下のスタッフが登場しません。日本政府の反応も憎まれ役の官僚陣はでてくるものの、政府中枢の戦争指導ははっきりと見えてきません。この辺りが残念なところでしょうか。
 その他メディックの活躍が描かれていますが、ちぎれた手首が壊死しないよう腹の部分に仮止めしたりなど、描写が若干未来的なものとなっていますが、これも2020年に近づき「新世紀日米大戦」の世界観に合わせようとしているのかもしれません。

覇権交代4 マラッカ海峡封鎖

ノベルス版 2019年6月20日初版発行「34-123」

 韓国、マレーシアに続きシンガポールまでが日米から離反し、中国の軍門に下った。そしてアジアと中東、欧州を結ぶ重要なルートであるマラッカ海峡には機雷が敷設され、貨物船が触雷沈没する。一方海南島では米海兵隊と陸自水陸機動団による内陸部への作戦行動が始まり、通訳の民間人を引き連れ緊張を強いる活動が続いていた。

 官僚や半ば強制的に連れて来られた通訳の民間人などが最前線の戦場にいたり、韓国での駐韓アメリカ大使の逃避行、弾道弾の直撃を受けた佐賀の駐屯地など、様々な場所でそれぞれの思惑が交叉します。ただ戦時下があまり出てこないのが、少し惜しい点ではあります。前作に比べて苦戦しつつ、状況が泥沼にはまっていく状態で、今後どのように進展していくのかが興味のある点です。

覇権交代5 李舜臣の亡霊
ノベルス版 2019年9月16日初版発行「34-124」

 韓国釜山の限定的な掃海活動を開始した海自だが、正体不明の潜水艦からの雷撃を受け沈没し、自衛官旗である旭日旗を戦犯旗と愚弄する釜山市民の妨害を受けてしまう。


 海南島の陸自水機団は米海兵隊ほどの損害を受けなかったものの、上園水機団長が戦死してしまい、急遽戦闘経験豊富なサイレント・コア指揮官である土門一佐が陸将補に戦時昇進の上サイレント・コアと水機団の指揮官を兼任することとなります。一尉で初登場した土門が臨時ながらとうとう将官となりました(時系列が飛んでいる新世紀日米大戦を除く)

覇権交代6 民主の女神
ノベルズ版 2019年12月25日初版発行「34-125」

上園水機団長戦死により、サイレント・コア隊長兼任という特例で臨時昇進した土門陸将補。しかし数千人規模の部隊を率いた経験のない土門にとって手放しで喜べる状況ではなかった。そして空では謎の飛行隊が日米の航空機を多数撃墜しながらも、それがなんであるか把握できない事態が発生していた。戦場でも圧され始める日米。中国をはじめとするレッドチームに対抗できるのか?

 覇権交代も6巻になりました。戦場描写が主体ですが、多少政治描写も入るようになったものの、初期には頻繁に出ていた米大統領は影を潜め、日本も官房長官が少し登場しただけです。戦場に於いても10式戦車は軽戦車扱いだったりと、陸自側の描写に手厳しさが感じられます。一応日米側は前進が見られたものの、前例を見る限りこのタイトルが終了する8巻まであと2巻。これで戦いが終わるのか、続シリーズが立ち上がるのか気になるところです。